先日、フィンランドで職業選択心理士(ammatinvalintapsykologi)のカウンセリングを受けてきた。
私が受けたのは、職業安定所(TE-toimisto)のサービスで、無料で2回受けることができた。
無職期間が長引き、今の職業が向いていないのでは?と不安を抱えていたので、専門家に相談することにしたのだ。
あまり期待しなかったのだが、結果としてかなりの助けになった。
今回はフィンランドで職業選択心理士のカウンセリングを受けた経験をシェアしよう。
職業選択心理士のカウンセリングとは
フィンランドの職業安定所は、求職者に対して職業選び、キャリアサポートの一貫として職業選択心理士のカウンセリングを提供している。
心理士と一緒に、置かれいている状況、自分の資質、仕事に対する期待や興味、過去の仕事や勉強したことを考えましょう、というサービスだ。
Ammatinvalinta ja uraohjaus – TE-palvelut
対象
求職者として登録していれば誰でも受けられると思うが、職業安定所のページによると、以下の人が対象となっている。
- 自分の興味のある職業がわからない人
- 仕事復帰の予定がある人(例. 育児休暇)
- 今の学歴では就職が難しい人
- 学歴の強化か新しい分野の学校へ行くことを考えている人
- 健康のため仕事や職業を見つけるのに苦戦している人
- 強み、興味、適正を考えることに興味がある人
なお私は4、6の理由に当てはまった。
申し込み方
職業安定所のページから申請をするか、自分の担当者に連絡をとる。
私の場合、3週間ほど待ってから行くことができた。
どのようなカウンセリングが行われるのか
心理士、カウンセリングを受ける人によって内容は異なるだろうが、私の場合、基本的に話すだけだった。
流れはこのような感じ。
その時、次までに考えてくること、やることなどをザックリ決める。
強制ではない。
第1回カウンセリングで話したこと
↑当時の落ち込み具合
一回目は、自己紹介をしたあと、抱えている悩みを話した。
内容は次のとおり。
- 前の仕事はうまく行かず、トラウマになっている
- 同僚に信頼されていないと感じることが多く、実際に失敗も多かった
- イレギュラーな状況の時、パニックになることがあった
- フィンランド語でのコミュニケーションがうまく行かず、孤独を感じていた。例えばコーヒー休憩でも会話に加われなかった
- 資格は持っているものの、在学時のフィンランド語能力はかなり低く、実は内容を解っていない分野がかなりある
- フィンランドで働く自信がない
…長い(笑)。
カウンセリングはほとんど私が一方的に話す形だった。
いろいろアドバイスがあると思ったが、たまに「○○についてはどう思う?」とか「あなたの考えは普通だよ」「こう考えてみたら?」などの短いコメントをくれる程度。
心理士は基本的に聞くだけで、気持ちを吐露することに重点が置かれているようだった。
話し始め、実は「ほとんど仕事の愚痴言ってるだけじゃん(汗)」と思った(何が起こって、誰がなんと言ったとか)。
しかし、心理士に導かれるまま話しているうちに、いかにフィンランドで働くことにストレスを感じているか解った。
また、今の状況を変えたいという気持ちが強いことも知ることができた。
とても親身に聞いてくれる心理士で、途中で何度も泣きそうになった。
最後に「次のステップを具体的に考える」という課題をいただき一回目は終了した。
第2回カウンセリングで話したこと
二回目のカウンセリングでは、前回決めた「次のステップを考える」という課題について話した。
私は職業安定所の担当者と直接合って、職業訓練や学校について取り決めをしたことを報告した。
内容は次の通り。
- 職業安定所と話して、学校に行けるかなど、具体的なことを確認することができた
- 自分が職業を変えたいという気持ちが強いことを改めて認識した
- しかし、職業を変えることにも不安がある
- 職業をコロコロ変える、変なサイクルに陥ってしまうのではないか
- 何度も学校に行くのはわがままではないか
などだ。
実を言うと、一回目でだいぶスッキリしたので、2回目は話すことがないなあ、と思っていた。
しかし、終わりに泣いてしまい、結局一時間以上かかった。
心理士さんが上手い人なのかもしれないが、話をどんどん引き出されるうちに、表面的に繕っているものを超えて、「悲しい」という本当の感情まで達することができた。
2回目は気持ちの確認と、具体的なプランを立てて終わった。
希望すればまだカウンセリングが受けられそうだったが、これで十分だと感じたので、カウンセリングは終了とした。
カウンセリングを受けた感想
簡単に一言にまとめるとめっちゃ良かった。
良かった点をまとてみる。
話すことでスッキリする
一回目のカウンセリングは、半分は仕事の愚痴という感じだった。
しかし、思ったことを素直に言えるのでスッキリした。
「仕事なんてこんなもん」「みんな大変な思いして働いてる」と思って無視していた感情(やりたくない、しんどい)を解放してあげることができた。
心理士は何を言っても否定してくることはないので、安心して話すことができた。
本当の気持ちが解った
仕事で起こったこと、思ったことをいろいろ話しているうちに、ピンと来たことがある。
それは、結局「前の仕事はやりたくない」を、表現を変えて言っているだけだということ。
例えば、「仕事でこんなことがあった、あんなことがあった」という話も、結局は「やりたくない」というメッセージなのだ。
また「ダメな移民だと思われたくない」と思っていることにも気がついた。
移民の就職率の低さがニュースになるたびに、自分はこの国のお荷物なんだと感じていたのだ。
自分に欠けているものが解った
カウンセリング中よく話題になったことの一つに、日本とフィンランドの違いがある。
- 日本では、仕事に不満を言うとわがままだと思われる
- 日本では、こういう行動が上司に評価される
- 日本では、問題が起きた時こう対処する
などなど。
7年もフィンランドに住んだのだから、ある程度フィンランド文化に染まったと思っていた。
しかし、全然そんなことはなかったのだ。
その気づきを通して、「自分に欠けているのは単にフィンランド流のテクニックなのでは?」と思った。
例えば、私は職場でミスをすると、反省していることをみせるために「私が悪いんです。申し訳ありません」と真剣に言っていた。
しかし同僚はミスが起きた理由を述べて「間違えてちゃったけど、状況が状況だったからね」くらいで済ましていた。
日本では私の態度も悪くないかも知れないが、フィンランドでは危なっかしい人と思われるかもしれない(よって信頼度が下がる)。
私はずっと、自分が仕事ができないダメな奴だと思っていたのだが、単に、フィンランドではとるべき行動知らないだけ、うまくやるテクニックがないだけだと気がつくことができた。
(もちろん、他にもいろいろあると思うが笑)
以上のことから、私はカウンセリングは役に立ったと思う。
困った時は、プロの力を借りることは大きな助けになる。
最初は「こんなの愚痴じゃん」という内容でも、勇気を出していろいろ話すことで見えることもあるようだ。
これでなんとか次の段階へ進めそうだ。
特に結婚でフィンランドに移住する人の多くは、日本との事情のちがいから、無職状態が長引いてしまう人もいるかもしれない。
外国で働くのは大変だし、精神的にもやられやすい。
英語のカウンセリングもできるようなので、「こんな悩みでもいいのかな?」と思わず、思い切ってカウンセリングを受けることをおすすめします。
ではまた!