ヴィーガンが肉を食べたくならないのは習慣の力-『ぼくたちは習慣で、できている』

ぼくたちは習慣で、できている

ヴィーガンになってから、「肉は恋しくならない?」と聞かれるようになった。

ツイッターでも「本当は食べたいんでしょう?」なんて表現を見かけるから、ヴィーガンはとんでもないやせ我慢をしているように見えるのだろう。

さて、早速この疑問に答えると、恋しくならない
実はそのことにビックリしているは誰よりも自分自身である(笑)。
もっと飢えると思っていたから、不思議に思っていた。

そんな時、佐々木典士さんの『ぼくたちは習慣で、できている』という本を読んでいたら、お酒を辞める話と、ヴィーガンが動物性食品を辞める話が重なる、非常におもしろい記述があった。

そこで今回は、『ぼくたちは習慣で、できている』を引用しながら「ヴィーガンになっても肉が恋しくならない理由」を考えてみよう

習慣になると脳が変わる

ネットでたまに「本当は肉を食べたいんでしょう?ほらほら、言ってみな?」とヴィーガンを煽る言葉を見かける。
しかし、ずっと「我慢とかじゃないんだよなぁ?なんか食べなくても大丈夫なんだよねぇ」と感じていた。

私はそれをポテトチップのようなものだと思っていた。

しかし、これは「なんとなく、そんな気がする」というレベルだった。

ところが、佐々木典士さんの『ぼくたちは習慣で、できている』で「スパイン」という神経細胞についての説明を読んで腑に落ちた

おいしかったレストランにはまた行くし、まずければいかなくなる。ぼくたちは、行動の結果から得られた楽しさや、嬉しさといった感情を、何度も味わおうとする。

~中略~

行動と快感の結びつきは、行えば行うほど強化されていく。神経細胞のつなぎ目であるシナプスで、信号を受け取る「スパイン」という出っ張りは、何度も信号を受けると、実際に大きく成長する

~中略~

反対に繰り返さなければ、それは眠ったような状態になる(アルコール依存症を克服していた人が一杯飲んだだけで元に戻ってしまうのには、このあたりに理由がありそうだ)。ぼくはもはやビールの爽快感や酩酊の気持ちよさが今となってはうまく思い出せない。だからそもそもお酒を飲みたいという欲求自体が起きていない。

佐々木典士『ぼくたちは習慣で、できている』

佐々木さんの話しによると、一定期間使われなかったスパイン(行動と快感を結びつける神経細胞)は眠るという。

つまり、ヴィーガンの期間が長くなると「肉や魚を食べる」スパインが眠った状態になり、「食べたい」という欲望が起きなくなる。

私のスパインも眠っていると考えれば、納得がいく。

動物性食品を食べないのが習慣になったヴィーガンの脳は、食べたくならないように変化するのだ

ヴィーガンを続けるコツはストイックになること?

実は、ヴィーガンを続けるコツは「厳しくしすぎないこと」だと思っていた。

といっても「たまに肉を食べましょう!」と言いたいわけではなく、自分に寛容になることが大事だと考えていたのだ。

しかし、スパインを眠らせるには完全に食べない方がいい、というのは大きな発見だった。
脳の神経細胞から見れば、よりストイックな方がヴィーガンを続けやすいとは、目から鱗である

実際、お酒を辞めたかった佐々木さんは、例外を設けず一滴も飲まないと決めることで断酒に成功している。

お酒を完全に立つよりも、週に1~2度などにした方が楽しみも諦めずに済むし、続けることができる気がする。しかしぼくの答えははっきりとNOである。ぼくも以前、完全に断つのはあまりに寂しいので、さまざまにお酒を飲んでいい例外ルールを考案してみた。「恋人といる時はOK」「旅行中はOK」「オーガニックの酒蔵と、お気に入りのブリューワーのビールだけは飲む」などなど。

~中略~

そうしてルールは複雑化し、これは認められるのか、我慢したほうがいいのかどうなのか考えることになる。つまり「意識」が呼び出されるので、もはや習慣として続けるのは難しい。

佐々木典士『ぼくたちは習慣で、できている』

あえて例外を設けないという選択

vegesushi

正直に言うと、ヴィーガンになってすぐの頃は、魚を食べたい未練があった。

そこで、「日本ではいいことにしようか?」と例外を作ろうとした。
しかし、ヴィーガンになった理由(環境や動物の問題)を思い出し、あえて例外を設けないことにした。

もし私が例外を設けていたら、ヴィーガンは続けられていなかったかもしれない。

佐々木さんの言うように、「ルールは複雑化し、これは認められるのか、我慢したほうがいいのかどうなのか考えることになる」からだ。

しかし、「食べない!」とガッチリ決めてしまえば、誘惑と戦うことがなくなり、結果として食べない習慣を作ることができる

 

またヴィーガンになってからも、自発的に動物性食品を食べようとしたことが数回あるが、食べなくて正解だった。

一度、閉店間際のビュッフェで、中途半端に残っているサーモンサラダを食べようとしたことがある。
私が食べなければ捨てられる運命なのは明らかだったからだ。

しかし、「せっかくここまで食べないで来たのだから続けたい」と思い、手を付けなかった。
この選択は脳的に正しかった。

ゆるヴィーガンの「ゆる」とは

そうは言っても、社会生活をする上では思いがけず動物性食品を食べなければならない時がある。
また様々な理由から、ルールを破らねばならない時もあるだろう。
人生には何が待っているか解らないのだ。

ヴィーガンだけど動物性食品を食べかけた

そういう時はひたすらベターチョイスを探すしかない。

私はヴィーガンの実践が難しい場合は、動物性食品を一切避けることは諦める「ゆるヴィーガン」という選択もありだと思う。
まず一歩を踏み出すことが大事だからだ。

しかし、「ゆる」の基準はじっくり考えた方が良いだろう。

スパインを刺激してはヴィーガン生活が辛いものになり、結果的に続けられなくなってしまう。
また、小さな例外が増えていき、習慣化が難しくなる可能性もある。

移行期間を設けるのは良いが、移行が済んだら脳をハックするために一定期間は完璧を目指した方が後が楽かもしれない。

習慣の力を味方につければ、向かうべき方向へコロコロと転がって行ってくれる

まとめ

私達は脳に支配されて生きている。

たとえ倫理的な正しさを追い求めていても、自分でもビックリするような行動を取ったりする。
脳を思った以上にワガママで、意識では支配しきれないこともある。

ヴィーガンになり始めは「スパイン」を意識し、まずは習慣を作ること、脳を変えることを始めてみてはどうだろうか。

ではまた~